千葉県鴨川市 大本山小湊誕生寺 公式サイト

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23.題目書写五十万遍の宝塔

23.題目書写五十万遍の宝塔

日蓮宗のお寺にお参りすると、門前や参道、境内などの一画に必ずといって良いほど南無妙法蓮華経のお題目を正面に刻んだ石塔があります。このような石塔を題目宝塔といい、日蓮宗であることが一目でわかる石塔です。

無縁墓地の最上段にある、ひときわ大きな石柱が建てられているように見える石塔も題目宝塔です。塔身は頂部を丸めた四角柱で一辺が42センチ、高さは3メートル40センチ余りもあり、さらに高さ78センチの台石に載ります。台石の前には、別石で造られた水鉢・花立が置かれています。

塔身の正面には、楷書体のお題目、その下に「書写し奉る題目五十万返なり日蓮大菩薩」と刻まれ、お題目を五十万遍書き写すという功徳を積んで、日蓮聖人への報恩感謝のために造立された題目宝塔であることがわかります。江戸時代には、小石一個ごとに経文を一字、あるいは数字づつ書いた経石を瓶などに入れて埋め、その上に石塔をたてることが広く行われました。いわゆる礫石経塚です。誕生寺の題目宝塔の場合「書写」とありますから、お題目の経石を埋めたことも十分に考えられます。お題目五十万遍といえば、法華経五十部(五十組)の写経に相当します。一般的な法華経の経塚では書写されるのは一部から数部ほどですから、五十部がいかに多いかがわかります。

正面以外の三面には、法華経の中の重要な一節が二行づつ刻まれています。二、三を示しますと、釈尊の大慈悲の大願をあらわした如来寿量品(にょらいじゅりょうほん)の「毎自作是念・・・・・・(毎(つね)に自(みずか)ら是(こ)の念を作(な)す。何を以てか衆生をして、無上道(むじょうどう)に入り、速かに仏身を成就することを得せしめんと)」、回向文として有名な化城喩品(けじょうゆほん)の「願以此功徳・・・・・・(願わくは此の功徳を以て、普(あまね)く一切に及ぼし、我等と衆生と、皆共に仏道を成ぜん)」、法華経の受持によって成仏できることを明らかにした如来神力品(にょらいじんりきほん)の「於我滅度後・・・・・・(我が滅度の後において、斯(こ)の経を受持すべし。是の人仏道において、決定(けつじょう)して疑あることなけん)」などです。

この宝塔は、現在の千葉県山武郡山武町雨坪(あめつぼ)の古川与次衛門、隣接する東金市田間(たま)の勝田祐義、同じく高橋平左衛門の3名が施主となり、享保2年(1717)に日蓮聖人のご命日である10月13日を期して造立されました。4年後の日蓮聖人生誕五百年を記念してのことでありましょう。